小沢民主の行方

 大手銀行の政治献金について、民主党の小沢代表は20日、大津市内での記者会見で「私どもは献金を受けるつもりはない」と語った。安倍首相(自民党総裁)が19日、大手行の政治献金を当面受けないことを表明したが、それよりも前に受け取りを見合わせる方針を確認していたという。

 造反組復党、本間政府税調会長の辞任と、まったくといってよいほど安倍首相のリーダーシップが示されないまま政権の火種の処理が進められているが、さらにふがいないのは野党サイドがまったく有効なアプローチを見出そうとしないことだ。
 もちろん敵失に乗じて政局に持ち込むばかりが政治ではない。まず政権批判ありきといった乱暴な議論に足元をすくわれた例は永田メール問題が記憶に新しい。不毛で根拠の乏しいスキャンダル追及は野党の勢いを殺ぐ。

 それにしても、だ。
 あれほど期待を担った小沢民主が、なんらイニシアチブを見せないまま、小泉政権の勢いの残滓の上をゆるゆると漂う安倍首相を見過ごしている現状を好意的に解釈する材料は乏しい。

 政局を嫌い、選挙でアピールすることができるか。
 10月の衆院補選はいずれも自民が制した。
 相次いだ知事摘発にともなう出直し選は、福島でこそ民主推薦候補が抑えたものの、和歌山では候補擁立に至らず、宮崎でも独自候補を模索しているが、現段階ではまだノミネートされる人材は伝えられていない。
 自民との相乗りを避けるという主戦論こそ小沢らしい側面をにおわせるものがあるが、地方選は必ずしも国政の延長とばかりは限らない。民主が有力な対抗馬を豊富に準備できるような事情があるのであれば別だろうが、冷静な見方をすれば。少なくともそのようなスタンスから長期的なスパンでの政策決定を見越した判断は生まれないととらえるのが自然だろう。ただ反与党、反現職というロジックだけで選挙戦をまかなうには、地方は生活の場でありすぎる。
 なおかつ、補選や出直し選での敗北は、(補選については近年のデータは自民の優位を示しているが)比較的野党に有利とされる戦いで取りこぼしたという、野党の非力さを印象づけてしまう。公明という組織力は厚い壁に違いないが、そこをクリアできずに参院選を戦うことは期待できない。

 選挙に限らず、いまの民主、および野党を見ている限り、戦うための準備ができていないのだという印象がどうしても拭えない。
 岡田、前原、永田、細野…少し目立てば祭り上げられ、あっというまにポシャる。個人がひ弱で、組織がひ弱だと解釈するほかない。
 なおかつ満を持してという形で先頭に立った小沢が、まったくの期待はずれであったという結論になれば、民主のみならず野党勢力衰退の大きな要因となりかねない。