滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)

滝山コミューン一九七四 (講談社文庫)

遠山啓『わかるさんすう』,全生研

こういう時間的にも空間的にも限定的なフィールドでジャーナリスティックに描ける知性を、心底尊敬する。
特殊であることを、書くべき事象ととらえず、降りる理由にしがちなのが、新聞ジャーナリズム(新聞に限らないのかもしれないが)現状である。
この、ちょっと風変わりな学校風景と対峙する道筋を、どう見出すか。


卒業から十年あまりが経ち開かれた同窓会で、著者以外の当事者にとってコミューンの記憶は遠いものとなっていた。裏返せば、抵抗の記憶が著者の中にコミューンを生かし続けたともいえる。
塾、進学が地域コミュニティなど制度的支配からのエスケープ手段であったという事情は、外形的な「お受験」が匂わすイメージとかけ離れ、私史の魅力を力強く語っている。

何の関連もないひとびとをグループ分けし、集団に『意味』を与えれば、支配願望と、逸脱者との闘争が生じる。独映画『エス』に描かれる実験の凄惨な結末が示す。

es[エス] [DVD]

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