労組からみる脱線事故

以下、引用が続きます。

まずJR西日本労働組合の現状についてのJR総連の見解。

 JR西日本のなかでJR総連に加盟する組合は、JR西日本労働組合(略称:JR西労)と言います。JR発足(1987年)から西日本旅客鉄道労働組合(略称:JR西労組)がつくられましたが、同労組がJR総連からの脱退を決めた(その後、JR連合に加盟)ことから、それに反対する組合員によってつくった組合です。1991年結成当時、組合員は4500名でした。現在、組合員は1248名となりました。退職などの減少もありますが、経営側からの切り崩しによるものです。全社員に占める組織率は4.1%です。

ちなみにJR西労組は次のように説明している。

西日本旅客鉄道労働組合(略称:JR西労組)は、JR西日本に存職する組合員の87%が加入している労働組合です。JR西日本は「オープンショップ」となっていますが、JR西労組には、31,400人の社員の87.09%、27,300人が加入しています。産業別組織はJR連合に、ナショナルセンターは連合に加盟し私たちは組合員・企業・社会に責任の持てる運動を展開しています。1987年(昭和62年)4月1日に新生JR西日本が発足し、1996年(平成8年)10月、念願の株式上場を実現し、2001年12月1日JR会社法の改正により、民間鉄道会社としての新たなスタートを切っています。JRの労働運動も国鉄時代の不正常な労使関係の反省のもと、分裂と対立の不幸な歴史に終止符をうつべく、民間企業にふさわしい、働く者が企業と社会に責任の持てる「自由で民主的な労働組合」づくりを目指して、私たちは1991年(平成3年)12月に新生「JR西労組」を結成しました。


上記JR西労組、JR西労など4労組共同での申し入れについて、具体的な改革に触れたのは4項目のうちひとつ、一番最後に書かれている。

○事故原因については国土交通省航空・鉄道事故調査委員会、警察関係者によって事故調査が進められていますが、今回事故において、制限速度を超えた速度で列車が走行していたとの見方を航空・鉄道事故調査委員会の委員もしていることを鑑み、運転士をはじめとする組合員の人為的な安全意識、安全操作などソフト面に頼るだけでなく、安全運転確保のため、危険潜在箇所へのATS−P型などハード対策を早期に強化すること。

この文面では基本的にハード面での提言に軸足を置いているようだ。

一方で、JR総連としては今回の事故に関して、以下のような見方を示している。

 JR西労の結成直後、JR西日本は乗り入れ先である信楽高原鉄道で大事故を引き起こしました。以来、JR西労は「安全」を運動の柱としてきました。JR西日本の運行第一の経営姿勢、「日勤教育」に示される強権的な労務管理の是正を求めてきました。これに対する経営側の回答は、JR西労に対する組合差別と脱退慫慂などの不当労働行為の数々でした。JR西労は、経営側の攻撃に怯むことなく闘い続けてきましたが、JR西日本の企業体質を是正させることができませんでした。このことが、今回の事故を引き起こした労働組合側からの主体的な反省であり痛恨の極みです。

ここに書かれている「日勤教育」とは何か。

 JR西日本労働組合(JR西労)によると、JR西日本では運転事故について、列車が十分以上遅れたり、赤信号に突っ込んだなどの『責任事故』▽十分未満遅れといった『反省事故1』▽オーバーランなどの『反省事故2』と分類、事故の芽といわれる『ヒヤリハット』も含めて運転区や電車区などの区長が運転士から事情聴取。再教育が必要だとされた場合には『日勤教育』が課されるという。
 再教育は必要だが、JR西労の安田昌史書記長は内容に問題があるとして、指摘する。「いつ終わるのか、何をやるのかを当人に知らせず、長い人では半年間も衆人環視の、いわばさらし者の状態に置かれる」。そのうえで「あくまで推測だが、運転士は遅れによるペナルティーが怖くて頭がいっぱいだったのではないか。会社側が責任追及の締め付けに励むほど、社員はできるだけペナルティーを軽くして、自分の不利益にならないようにしたいという気持ちが働く」とみる。

これらを受けての、朝日のきょうの報道。

 死者106人を出した兵庫県尼崎市のJR宝塚線福知山線)で25日朝に起きた快速電車の脱線事故で、兵庫県警捜査本部(尼崎東署)は、電車を運転していた高見隆二郎運転士(23)=死亡=に加え、列車運行や高見運転士の指導、教育に当たっていた管理部門の職員についても、業務上過失致死傷容疑で刑事責任を追及する方針を固めた。
 同容疑での立件には通常、過失と事故の発生に直接的な因果関係があることが要件となる。列車事故の場合、ミスをした運転士や列車指令員が訴追されることが多い。県警は100人を超える死者を出した今回の脱線事故が起きた背景には、JR西日本の列車運行や運転士の管理に構造的な問題があると判断。結果の重大性や再発防止の必要性も考慮し、組織内の刑事責任を広く追及する構えだ。