『大仏破壊』読了

タリバンの攻勢から崩壊に至るアフガニスタンの姿がよくわかる。
地方出身のタリバン及びそれを率いるオマルはイスラムの教義についても政治的についても基本的に無知で、野心もなかったが、期せずして宗教的、政治的権威となっていく。そのプロセスで関与したのがビンラディン。国を追われ行き場を失った彼をオマルは深く考えることなく単純な善意から受け入れ、そのことが次第にタリバンの伸長を助けると同時に、ビンラディンの金とアラブの武力はカブール陥落、バーミヤン攻略といった場面で重要な役目を果たす。同時に、国士的精神に根ざしていたタリバンの運動を単なる暴力機関と変貌させていく。タリバン政権はイスラムの教えを正しく行うために「勧善懲悪省」を置くが、教義に疎く地方出身の彼らにとって教義の解釈はかなり狭く、流行や風俗など都市的などを槍玉にあげるなどエキセントリックなものだった。オマルに対するビンラディンの影響が強まるのと並行して勧善懲悪省の権力は絶対的なものとなり、「開明派」閣僚は持ち場を外される。やがてアルカイダと不可分となったタリバンは、自制的コントロールを失われていく。

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