流通備蓄

 人口13億人の中国や、朝鮮半島に何らかの事情で難民が発生した場合、彼らはまっ先に日本にやってきます。防衛庁が予測している難民の規模は200〜500万人です。こうした規模の難民が日本にたどり着いた場合、追い返せるでしょうか? 無視して食糧を提供しないでいられるでしょうか。あり得ません。しかし日本にはまったくと言っていいほど食糧の備蓄はないのです。コンビニやスーパーが抱える在庫はわずか1日分ですし、米も2カ月分ぐらいしか備蓄をしていません。

 不測の事態を想定し、必要な物資を確保しておく現物備蓄に対し、近隣自治体や企業と供給提携を結ぶことで有事のパイプを確保する流通備蓄がある。
 流通備蓄はストックを抱えずに済むことから安易に頼りがちだが、有事の規模次第で需給バランスが崩れた場合フォローが効かない。上記引用の難民発生のような特殊なケースでは十分な対策などあり得ないし、よりグローバルな見地での問題となるが、震災のような複数自治体、生活圏にまたがる災害では、流通備蓄は破綻する恐れがある。これを広く捉えれば食糧安全保障の問題だし、原油などエネルギー資源の問題とも重なってくる。

一九九五年の阪神・淡路大震災でも、「流通備蓄」の提携先だった企業の倉庫やスーパーなどが軒並み倒壊し、期待していた物資が届かない事態に追い込まれた。この教訓から、震災前に食料備蓄がゼロだった神戸市は、震災後、約十万人分の食料を備蓄している。同市の担当者は、「震災直後の食料提供に備蓄は不可欠」と強調する。