政治家の「変節」と「名誉ある撤退」

 野田聖子議員が郵政法案賛成を表明した。
 先の衆院選では反対を貫く、信念を曲げないと通して地元に支えられながら逆風を耐えきった。

 野田氏は「郵政民営化の実現を唯一の争点とした自民党候補者が大量当選を果たし、法案の可決は確実。法案が完ぺきなものでなくても、民営化のスピードを上げろという国民の声として理解した」と説明。また、「議員としての責務は今後、着手される郵政民営化への取り組みがより良い形で達成され、国民生活の向上に資するよう努めることだと考える」。さらに「官から民へのお金の流れを確実にするための財投債の見直しなど、積極的に解決にあたる」と話した。


 信念で逆風を耐え抜く野田の姿に共感したものにとって、民意に耳を傾けた、と語りながらの翻意は「変節」としか映らない。政治的に永らえようとした、と各方面から喧伝されるだろう。


 機を見るに敏な某女史が、さっそく反応を示した。

 目下絶好調の小池氏。この日は閉会式後の会見で、「ポスト小泉」との評について「いやいやとんでもない」と謙そん。しかし、郵政造反議員については「私なら信念を曲げませんね」。女性初の首相候補とも目されながら9日に郵政「賛成」への転向を表明、株を下げた野田聖子議員(43)への当てつけだった?


 信念を訴える政治家が信念を曲げたとき、その期待値の高さが裏返しとなって酷評に結びつく。かつて土壇場でヒヨったとして名実ともに一気に凋落した加藤紘一は、「加藤の乱」が雲散霧消するときに「名誉ある撤退」と語り、失笑と怒りを買った。国政への復帰は果たしたが、今なお一線からは遠いところでくすぶっている。


 野田も、加藤も、スジのよくないことは承知の上で反旗を掲げた訳で、勝てそうにないから降りるという姿は致命的なイメージダウンだ。変節が保身に繋がらないことは、批判する側だけでなく本人が知っている。必ずしも権謀術数に長けた判断とは言えない撤退、翻意に何を読み取るかで、評価は変わるだろう。


 「かつての総理候補」に捲土重来はあり得るだろうか。
 期待させるものがあるのは(一時にしても)将に向けて弓を引こうとするだけの信念を見せたという点にある。ヤマタクやツジモトやムネオが返り咲くのとは全く色合いの違う形での、チャンスは、まだあるはずだ。