種の本質を見ること

外来種管理ばかりがやり玉に挙げられることが多いが、実は子どもたちや漁協が善意で行っている放流も、問題を抱えている。

希少種の復元や自然環境保全を掲げ、メダカなどの放流が盛んになっている。しかし、環境が合わずに魚が死んだり、他種を捕食してしまって生態系を崩したりするケースもある。近縁種との交雑や、遺伝的性質がもともといた集団と置き換わる可能性も少なくない。

例えばヤマメとかイワナとかで、ハイブリッドと呼ばれる交雑種が観察されていることは、指摘されてきた。アユについてもこういう研究成果がある。厳しい言い方だが、知識を伴わない善意は偽善に等しい。それこそ種にダメージを与える行為にも関わらず、放流がそれをもたらしたことに触れられることはこれまであまりなかった。研究が比較的最近になってからということもあるだろうが、「放流」という行為の持つイメージも対応を遅らせた一因と考えてよいだろう。善意が絡むケースで、その印象を克服し、定量的な議論をすることがどれだけ難しいかという証左だ。